台湾は何語を話すのか?

台湾の路地 中国語

台湾で中国語を学ぶということ

台湾で中国語を勉強して8ヶ月になるのだが、折に触れて考えてみると、台湾で中国語を学ぶということにある種奇妙な感覚を覚えることがある。そもそも台湾で話されている言葉は、中国語なのだろうか?中国語とはなんだろうか?

これは、例えば韓国語を朝鮮語と呼ぶべきか、コリア語と呼ぶべきかなどというような政治的・歴史的な問題に関わるものでもあるだろうし、あるいは、アメリカ英語かイギリス英語、どちらが正しいのか?というような正統性をめぐるといった議論にも似ている。

松山の公園で撮ったフシギバナ
松山の公園で撮ったフシギバナ

無論、英語も中国語も今やグローバルな言語であり、どこの発音が正しいというような議論は意味をなさない。

しかし、言語のルーツや変化をつぶさに探っていく営みそれ自体は、言語を習得することとは別に、とても意味のあることだと思う。というのも、言語の歴史的な厚みを知ることは、土地の記憶だけでは知ることができない文化ないしは集団の歴史、思考の特徴を捉えるヒントになるからだ。

さて、この記事を書く理由をでっち上げたところで、本題に戻ろう。

台湾では一体何語が話されているのか?

台湾で最も広く話されているのは中国語であることは、周知の通りだろう。

台湾における中国語は、一般的に「台湾国語」あるいは「台湾華語」と呼ばれている。一方、中国大陸の標準語は一般的に「普通話」といわれ、この2者は台湾では区別される。これは単に呼称の差に止まらず、語彙や発音にかなりの差がある。

台湾の標準中国語=台湾国語、台湾華語

中国大陸の標準中国語=普通話

松山南京あたりは緑が多い
松山南京あたりは緑が多い

国語についで、2番目に多いのが「台湾語(75%)」、それから比較的少数の「客家語(9.4%)」「原住民諸語(2.4%)」「日本語」と続く。

台湾語というのは中国語の中でも、福建省や広東省の一部などで話されている方言である閩語の一種、閩南語に日本語と原住民諸語の語彙が加わった台湾独自の言語である。

客家語は、中国大陸の山間部に暮らしていた客家と言われる比較的少数の人々が話す言葉である。現在台湾の約20%を占めており、そのうちの47%の人が流暢に客家を話すことができる。*1

それから原住民諸語は、漢人が台湾に来る以前から台湾で暮らしている原住民が話す、オーストロネシア語族の言葉である。原住民は台湾人口の2.4%を占め、計16部族に分かれる。部族それぞれの言語はかなり異なり、また同じ部族でも山一つ超えると通じないということがあるほどに多様な言語である。(2020年時点で公式に認定されている数。さらに少数の成員からなる未認定部族も少なくはない。)

日本と台湾の歴史を知っている人は、ここに日本語が入ってくることになんら驚きはないだろう。今となっては台湾の人々が話す日本語を聞く機会は殆どないが、台湾語には日本語の語彙が多く残っており、いまでも断片的にその影響を垣間見ることができる。

台湾国語=台湾の母語か?

最も広く話されているのは台湾国語であるが、それをもって台湾人の母語=台湾国語ということができるだろうか?
以下の図を見ていただきたい。

この図はwikipediaから拾ってきたものであるが、台湾における6歲以上の人口を対象に、家庭でもっとも頻繁に話している言語のうち、台湾国語の占める割合を調査した2010年のデータだ。

濃紺が家庭で話す言語の50%以上を国語が占め、色が薄い場所ほどその割合が低くなる。例えば、台北(図でいうと頭部の中央あたり)は濃紺だが、西〜西南部においては家庭での国語使用率が50%を切ってくる

これは都市部と田舎に占める若者の割合が異なるからだろうか?
別のデータがある。今度は年齢別だ。

上記の表は這是行政院主計總處が行った《99年人口及住宅普查》(2010)の結果である。家庭で主に閩南語(台湾語)使用する人口の割合は、年齢が低くなるに例して減少してはいるが、それでもかなりの数の人が閩南語を話していることがわかる。*2

もう一つ注目すべき点は、65歳以上の人口における国語の使用率の低さ(45.3%)だ。台湾において国語が話される、というか話さなければいけなくなったのは、1946年の国語運動に端を発する。それ以前の世代にとって、国語とはまったく日常的なものでなかった。

さて、先ほどの地図に戻ると、西〜西南部では国語を家庭で使用する割合が低い。個人的な実感としても、このあたり出身の同世代(20代)の台湾人は概ね、家族とは台湾語で会話する、つまり、義務教育から国語を学び始めたという人も少なくない。(n=20くらいだが)

とりあえずのまとめ

ということで、冒頭の問い、台湾は何語を話すか?ということに答えるならば、中国語(台湾国語)は政治や教育において広く公式に使用されているが、台湾人すべてにおける母語ではない。ということになる。

お疲れ様です。甘いものでも食べてください。
お疲れ様です。甘いものでも食べてください。

ここから関心は次のような問いに移ってくる。すなわち、台湾国語と台湾語、客家語、原住民諸語はどう異なり、どのように使い分けられているか?
それから、台湾国語と中国語はどう違うのか?ということだ。

今回は一旦ここまでで話を止めておこう。
次回は、ひとまず台湾国語と中国語(普通話)のざっくりとした違いを書いていきたいと思います。

*1 105 年度全國客家人口暨語言 基礎資料調查研究
委託單位:客家委員會 執行單位:典通股份有限公司
中華民國 106 年 6 月

*2 詳しい調査結果および関連資料はこちら
教育部 本土語言調査報告
https://mhi.moe.edu.tw/newsList.jsp?ID=5

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