可能世界のわたしたち 01 #しゅん

インタビュー

もし、わたしの生まれた国が違えば、受ける教育が違えば、あるいは言葉が、文化が、家族が違えば、今頃どんな人生を歩んでいるのだろう。

隣の家の芝は青い。ないものねだりはダメだなんてよくわかっているけれど、どうしたって考えてしまうことがある。このままの自分でいいのだろうか、もしかしたらもっと自分にぴったりな生き方があるのかもしれない。あるいは、まだ見ぬ世界の先に、きっとわたしを暖かく迎え入れてくれる場所が、まだ見ぬ人生の可能性を見つけ出すことができるかもしれない。

もし今、世界中のありとあらゆる同世代と語り合えるなら、どんなことを聞いてみたいだろうか?

「可能世界のわたしたち」と題したこの連載は、日本を飛び出して台湾で生活をしているわたしが、その生活の中で出会った同世代達のリアルな声を届けることを試みる企画だ。

1回目は、台湾人で友人のしゅんにインタビュー。中国語、日本語、英語、フランス語と台湾語も流暢に操る彼は、この突然のインタビューも全て日本語で対応してくれた。台湾、日本そしてフランスでの生活体験を経て、新たな人生のステージヘと向き合う彼の目には、どんな世界が広がっているのだろうか。

実は2年くらい日本で暮らしていました。

−簡単に自己紹介をお願いします。笑
しゅん:しゅんと言います。しゅんと言う名前は、前の会社の日本人社長につけてもらいました(笑)。台湾の豊原区*(台中の北東)で生まれました。実は、家族の都合で4~6歳までを東京の八王子で過ごしたこともあります。

−なるほど、では日本語をこれほど流暢に話せると言うのは、そのころに培った日本語能力が元になっている?
しゅん:実は日本で暮らしていた時の記憶はほとんどなくて、あまり関係ないかもしれません。小学校に入学するために台湾に帰ってきて、小学生高学年の頃から日本語を再び学び始めました。きっかけは、言語が好きだったと言うこともありますが、それ以上に、ポケモンのゲームにはまっていたことが理由ですね。その時は日本語が全くわかりませんでしたが、カタカナを見て、なんのポケモンかわかるようになりました。

−日本から帰ってきて、台湾の小学校に入学した際、生活や環境の変化にギャップを感じた?
しゅん:やっぱり最初は、自分の考えをうまく表現できなかったので、クラスメートにからかわれた記憶はありますね。あとは単純に、台湾人は熱情的ですよね(笑)。人との関わり方、距離感、物事の進めかた等に関しては、自分の性格的に日本人の方があっているように感じる時が多いですね。そう行った意味で、自分は台湾人っぽくはないと感じる時もあります。

−では、自分を台湾人として強く意識することはあまりない?
しゅん:台湾人のアイデンティティというのは難しい問題ですね。台湾は原住民も移民もいる多民族社会で、「国」という意味での歴史もそれほど長くなく、文化と言う点でもなかなか一口に語れない部分があるので。

豊原の実家 バルコニーからはいつも緑が見える

−小さい頃、漠然とやりたいこと、なりたい人はいた?
しゅん:小学校の頃は、絵を描くのが好きだったので、芸術家になりたいと思っていました。周囲からもよく褒められてたので、余計に。(笑) でも中学生になって、絵を描く時間もなくなって、より現実的な生き方を求めてゆく社会的な圧力?を感じて、それに伴って自分の創造力もなくなってきたようになりました。

憧れで選んだファッション・デザインと、現実のギャップ

−大学でファッション・デザインに進んだのはどうして?
しゅん:學測*(日本でいうセンター試験)での成績が悪かったからです。(笑) 実は、もともとは第一志望は国立大の外国語系の学部に進学希望してました。高校でフランス人留学生との交流する機会があったのががきっかけで、そこから外国語への興味が強くなってきた。でも中学、高校と、将来何ををすれば良いかよくわからず、こんなにたくさん勉強しても、その意義が見出せなくなったりして、ちょっと暗黒期でした。だから、成績も良くなかったですね。結局、なんとなくの憧れと、自分が関心を持っていた芸術方面への関心から、ファッション・デザインが有名な大学に進学しました。

−実際に入学してみてどうでしたか?
しゅん:半年で大学を転学しました。(笑) 理由は2つあって、1つは手縫いやミシンがけをひたすら地道にこなし、技術を蓄積してゆく必要があったのですが、しんどかったですね。あまり向いていないということに気づきました。2つめは、私立であることから学費や材料費、生活費が結構かかるということで、転向を決意しました。

大学1~2年生が1番充実してたかなぁ。

−なるほど。デザインといえども、やはり基本の技術をしっかり固めることが第一だということですね。華やかなイメージは一瞬にして砕かれたと。(笑)
しゅん:はい。(笑) で、結局入試をし直して、無事国立大学のフランス語学科へ進学しました。成績が良かったので、奨学金をもらいましたね。大学1~2年生の時が、人生で最も充実していたような気がしますね。勉強している内容も好き、同級生も好きだったし、模擬国連のサークル活動も。加えて、教授たちも人生の相談に対して、親身に相談に乗ってくれましたね。キャンパスは緑豊かで、放課後は散歩したり、バレーボールサークルにも参加し、充実した大学生活を送りました。

−やはり大学生活の充実度は、どの国でも共通していますね。いまでも1番中の良い友人は、大学の時の友達ですか?
しゅん:そうですね。いまでも、多い時で月に2~3回は大学の友人とご飯を食べたりします。

−で、大学の時に交換留学にも行った?
しゅん:はい。交換留学制度を利用して、フランスに行くことに決意しました。フランスでの生活では、毎日帰宅後、料理をすることが最大の楽しみでした。(笑) スーパーとか市場に行って、現地生活を体験する。自分で食材を見て選んで、健康志向になりましたね。

−卒業後の生活、就職、留学、起業とか、どんなことをイメージしていましたか?
しゅん:勉強を継続するのか、就活をするのか、かなり迷っていましたね。加えて、自分の生活をしっかり規則正しく保つことを意識していて、そのバランスがうまく取れなくなることに対する不安がありました。

−台湾ではどういう風に就活をする?
しゅん:大学が主催する就活イベントもありますが、ぼくの場合は日系の人材会社が主催する就活イベントに参加して、たまたま面白そうなマーケティングの会社があったので、そこで2年間働くことにしました。
職場がかなり少人数で、ルールや働き方に縛りが一切なかったので、大学の延長みたいな感じでしたね。自分の意見や思ったままに仕事を進めることができたので、楽しかったです。

生活と仕事のバランスは意外に良かったベンチャー時代

−実際働いてみて、生活と仕事のバランスはどうでしたか?
しゅん:意外に生活と仕事のバランスはしっかり取れましたね。ただ、会社の成長に伴って、経営理念や働く環境、自分に求められる仕事内容が変化してきました。また、自分はマーケティングを担当していたのですが、自分がそもそも商品に興味自体にそこまで興味を持てかなったこともあり、結局は会社を離れることを考えるようになった。でも、当時の社長とは今でもたまに連絡を取り合いますね。

−現在はどういう状態?
しゅん:退職後の現在はフランス語の翻訳等でお小遣いを稼ぎながら、1年間休憩中ですね。元々は日本で再就職希望だったのですが、コロナもあったので……ただ、やっぱり休憩しすぎるのもよくないですね。何かをしなくちゃ、という圧迫感を自ら作り出しては、それに追い立てられています。休みすぎていると、必要以上に体や心の状態が気になったりして、リラックスするつもりが、逆に心身の不調につながることに気づきました。実家あたりに帰って働きながら、余った土地を活用して農業もありかな、とかも考えています。

−今、パートナーもいらっしゃいますよね。
しゅん:ですね。(笑) パートナーのことを考えすぎて、自分がどうすればいいかわからなくなった時期もあります。なので、自分の中でしっかり人生の目標を立てていくことと、パートナーとの生活のうまいバランスを見つけることが、必要だと感じています。

Profile & おすすめスポット

名前:しゅん
出生地:台湾豊原
生年月日:1993/11/05
趣味:エクササイズ、料理、科学雑誌を読む
好きな食べ物:野菜と魚

▷台湾で好きな場所は?
やっぱり豊原の実家かな。緑豊かで。あと中央大学ですね。中央大学と豊原の実家周辺は似てるかな。都会が好きと思っていたけど、永和(台湾でもっとも人口密度が多いエリア)に引っ越してから、なんか落ち着きません。(笑)

▷他人にお勧めしたい台湾の場所は?
花蓮かな。ゆっくりできるし、景色もよくて、田んぼも海もあって、人も少ないので。やっぱり人が少ないところがいいな。台北だったら、民生社區のあたり。

コメント

  1. […] −現在你的Buket list中寫什麼?美麟:多半是我先去旅行的地方。苗栗,鹿港,基隆,豐原(讀了《しゅん》的專訪後補充了這一項),還有想去偏遠的一些島嶼,像小琉球,金門,綠島,蘭嶼……但是我沒駕照,所以去鄉下很不方便。我正在尋找跟我一起去旅行的台灣朋友。 […]

  2. […] −いまバケットリストには何が書かれている?美麟:旅行で訪れたい場所が多いかな。苗栗、鹿港、基隆、豐原(これは「しゅん」のインタビューを読んでから追加しました)とか、あとは離島にも行きたいな。小琉球,金門,綠島,蘭嶼……ただ、バイクのライセンスを持ってないので、田舎に行くのは不便ですね。一緒に旅行に行ってくれる台湾人の友達を募集中です! […]

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